実施期間と参加人数
この臨床研究は、2019年9月から2021年12月(手術後2年の追跡観察期間)まで実施され、全施設で計3人の患者様ご参加頂く予定です。
臨床研究に参加いただける方
この臨床研究に参加いただけるのは以下の条件に当てはまる方です。
また、以下のいずれかに当てはまる場合は、この臨床研究に参加いただけないことがあります。
その他、臨床研究に参加するためにはいくつかの基準があります。また、臨床研究参加に同意された後でも、その基準にあてはまるかどうかの事前の検査の結果によっては参加いただけない場合もあります。
予想される効果および不利益
(1)予想される主な効果について
慢性心不全大型動物モデル(犬、豚)において、試験機器(右室部分の穴あき心臓形状矯正ネット)は、対照群(ネットを装着しない群)や通常ネット群(右室部分の穴がないネットを装着した群)よりも、右室・左室の収縮能を有意に改善する結果になりました。
スーパーコンピュータを用いた慢性心不全モデルでの心臓シミュレーションにおいても、試験機器(右室部分の穴あき心臓形状矯正ネット)は、一回の心拍出量を増やし、左室心筋のエネルギー消費を軽減することにより、左室のエネルギー効率を改善することがわかりました。
さらに、心不全状態では、心筋線維の配向が乱れ、収縮効率が低下しますが、試験機器を装着すると、その乱れが改善することがシミュレーションにて示されました。
これらの結果は、本試験機器は装着直後から心機能改善効果が期待できることを示しています。
海外で考案された類似医療機器の海外臨床試験の成績から、左室の大きさ・容量の減少、左室駆出率の改善及び心臓を、より楕円形へ変化させ、より効率的な心臓形状とする効果が期待されます。また、心不全の進行によって必要となってくる主要な心臓手術の必要性を減少させ、患者の生活の質(QOL)を改善させる効果も期待されます。
類似医療機器での海外の臨床試験の成績概要を以下に示します。
*文献:「Clinical Evaluation of the CorCap Cardiac Support Device in Patients With Dilated Cardiomyopathy」2007,The Society of Thoracic Surgeons
:「拡張型心筋症患者のCorCap心臓補助装置の臨床評価」2007年米国胸部外科学会(Elsevier社発)
参加された患者様は、全300名で、類似医療機器で治療された患者様(被験機器群)は、148名、類似医療機器で治療しなかった患者様(対照群)は、152名でした。尚、この患者様の中には、僧帽弁修復・置換術を併せて施術された方も含まれています。
心不全の重症度を判定するNYHA分類の治療後の変化と治療後に主要な心臓手術を行っていない割合(非実施率)の結果概要を下表に示しました。類似医療機器で治療された患者様(被験機器群)の方が、NYHA分類の改善率が45%と高く、また、主要心臓手術の非実施率は89%と高く、その効果が示されています。
(2)予想される主な不利益について
装着手術後に、試験機器のネットの劣化と、ネットの断裂が考えられますが、1億回の耐久試験(3年間の心拍数に相当)ではネットの劣化、断裂は認めませんでした。手術後数ヶ月間でネットはあなたの心臓に癒着し、強度は安定化することが予想されます。
合併症は、周術期(装着後すぐ)には感染(創感染、肺炎、カテーテル感染等)、出血、心不全の悪化、冠動脈(心臓の周りの血管)への影響、遠隔期(装着後しばらくしてから)は、収縮性心膜炎の発生が考えられます。
創感染:手術部位に起こる感染で、一定頻度で起こる可能性があります。一般に人工物を移植する手術では感染する可能性が高くなることが報告されています。研究施設の心臓血管外科では創感染に対して様々な予防策をとり、創感染が起こらないよう最善を尽くしています。
冠動脈への影響:試験機器(心臓形状矯正ネット)は、心臓表面を圧迫して効果を発揮するため、冠動脈を圧迫して冠動脈の血流を低下させる可能性があります。この点については、動物試験を実施し、試験機器の装着により、冠動脈の血流予備能や形態に影響がないことを確かめています。
収縮性心膜炎:心臓の周囲に試験機器(異物)を装着するため、遠隔期に、心臓の表面組織が線維化したり、石灰化する収縮性心膜炎が起こる可能性があります。しかし、本試験機器の類似医療機器であるAcorn CorCapの5年にわたる治験において、収縮性心膜炎の発生はなかったと報告されています。また、本試験機器における動物での長期埋植試験でも心臓周囲の組織反応・癒着は軽微でした。
このほかに、心臓外科手術に関連して起こりうる以下の様な一般的な有害事象が考えられます。
アレルギー反応、不整脈、心タンポナーデ、慢性痛、死亡、心原性ショック、神経障害に繋がる可能性のある血行動態の悪化、感染・敗血症、局所皮膚反応、心筋梗塞、外科手術障害、心外膜液、心膜炎、気胸、肺・腎臓・肝臓不全につながる障害、再手術、血栓塞栓症
下表は「(1)予想される主な効果」における「類似医療機器での海外の臨床試験」と同じ文献での成績です。全観察期間中の有害事象(治験参加中に起こった全ての好ましくない事象)の内、重篤な有害事象の発現数を示しています。ただし、類似医療機器が原因と疑われた事象(副作用)はありませんでした。
さらに、海外では2004年12月時点で欧州5カ国(フランス、ドイツ、オランダ、スウェーデン、イタリア)において174名の患者様に類似医療機器使用の実績がございます。その患者様においても、類似医療機器が原因と疑われる有害事象は報告されていません。
これらの有害事象は今までに報告されているものであり、すべての患者様にすべての有害事象が発現するわけではありません。以上のような予想される有害事象・症状に対しては、担当医師が随時観察し、その都度適切な治療を行ないます。
試験への参加が中止となる場合について
この試験にご参加いただいた後、以下の様なことがあった場合は試験への参加を中止することがあります。その場合でもあなたにとって適切な治療を行いますのでご安心ください。
なお、試験への参加を中止した場合も、中止時の安全性を確認するために可能な限り診察、検査などを行わせていただきます。試験機器は一旦装着されますと、原則とりはずすことはありませんので、ご了承ください。
試験終了後の対応について
試験期間中に発生した有害事象が回復せず継続している場合は、原則、症状が回復あるいは安定するまで追跡調査を行います。
試験終了後に本試験機器と関連性が否定できない有害事象が認められた場合は、追跡調査を行います。
試験に関連した健康被害が発生した場合について
この試験は、これまでの研究・試験結果に基づいて科学的に計画され、患者様の安全を最優先に慎重に行います。
今回行われる治療は、拡張型心筋症に対する標準的な治療法ではありません。しかし、この臨床試験を行うことによって拡張した左心室の拡大を抑制し、心機能を改善するなどの効果が期待できると考えています。もし、この試験により健康被害が生じた場合は、通常診療の範囲で最善の治療を行います。なお、健康被害に対し適切に補償を行うため、補償保険に加入しています。また、試験機器が原因と疑われる予想外の重い有害事象が現れ後遺症を残した場合に備え、臨床研究保障保険に加入しています。
試験に関する費用の負担について
心臓形状矯正ネットの装着手術に係る費用は各施設で負担させて頂きます。
試験で計画されている入院中の検査、心臓形状矯正ネットの装着手術費用および入院費は研究費で負担させて頂きます。退院後の診療に係る費用は医療保険で行うこととなります。
外部への検査データの提供について
プライバシーの保護について
患者様に守っていただきたいこと
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